前回の投稿では、
① 楽器へのリスペクトと、自在なサウンドコントロール
② 挑戦する音楽ジャンルへのリスペクト
について触れました。
①については、まだこのブログではほとんどお話ししていません。
こちらも今後、いろいろな角度から、じっくり書いていきたいテーマです。
では、今回は、②「挑戦する音楽ジャンルへのリスペクト」について、もう少し掘り下げてみます。
前回、音楽ジャンルによって「リズムのフィール(感覚)」が違う、ということを書きました。
笛は一般的に「旋律楽器」と思われていますが、実は演奏においてリズムはとても重要です。
ここでいうリズムとは、「楽譜どおりに音符の長さを正確に演奏すれば、それでOK」というだけのものではありません。
むしろ、楽譜には書き入れることのできない部分に、リズムの本質があったりします。
そして、その「リズムの質」の違いが、音楽ジャンルの個性を特徴づけているとも言えるのです。
「音楽をジャンルで分けるなんて……」
そんな声も聞こえてきそうですね。
その気持ちは、もちろん分かります。
でも、例えば、ジャズ、ロック、R&B、レゲエ、フラメンコ、ウィンナーワルツ、演歌、民謡、能楽、雅楽、インド音楽、アラブ音楽、韓国音楽……。
これらの音楽の「それらしさ」を決定づけているものには、音階や音律の違いだけでなく、それぞれに特徴的なリズムのフィール(感覚)があります。
では、多くの方が親しんでいるアニソンやJ-POPはどうでしょう?
実は、洋楽のポップスやヒット曲、あるいはK-POPなどと比べると、J-POPやアニソンには、リズムの「癖」が比較的少ない。
ある意味では、平坦で、正確な音符の長さを感じさせるリズムが特徴のひとつとも言えます。
ところが、オリジナルをレコーディングしているJ-POPやアニソンのアーティスト、ミュージシャンの中には、海外の、ある意味「癖の強い」「強烈な」リズムを持つ音楽に触れ、その洗礼を受けてきた人も少なくないのです。
そうした音楽的体験の片鱗が、楽曲の中に通奏していることがあり
ます。
それが、曲そのものの存在感や、思わず身体を動かしたくなるような躍動感の源泉になっていたりします。
たとえ生演奏ではなく、打ち込みによる音源であっても、プロの作曲家やアレンジャーが、それまでに経験してきたさまざまな音楽が、何らかの形で反映されていることもあるでしょう。
もちろん、世の中にあるすべての音楽ジャンルを隅々まで習得することなど、まず不可能です。
それでも、まったく違うジャンルの音楽を学んでいくと、そこにはジャンルを超えて共通する、普遍的な法則のようなものが見えてくることがあります。
そして、いくつかの要素がグラデーションのように混じり合い、新しい音楽の個性になっていくこともあります。
「笛を気持ちよく、楽しく吹きたいだけなのに、そこまで考えるのは面倒くさすぎる!」
……そんな声も聞こえてきそうですね。
でも、こうしたことを考え、さまざまな分野の音楽とコラボレーションしたり、研究したり、交流したりしてきた経験が、私自身のアーティストとしての表現活動にもつながっています。
そしてそれは、演奏指導においても、受講者それぞれの要望に応え、その人自身のポテンシャルを引き出していくために活かされています。
「ただ笛を吹く」のではなく、その音楽が持っているものを知り、そのジャンルの「らしさ」を感じ、そして、それを笛という楽器でどう表現するのか。
そこまで含めて考えることが、私にとっての「演奏する」ということ。
そして、こうした考え方や経験が、受講される方が目指す理想の演奏を身につけるための一助となればと思っています。

